相次ぐ高齢者の所在不明に思う

2010-08-30 18:15:57

 足立区で戸籍上では111歳の男性が白骨死体で発見された事件をきっかけに、全国各地で高齢者の所在や安否がわからない例が相次いでいる。
家族に聞いても「居場所はわからない」などと、常識では考えられない答えが返ってくる。余りにも疎遠な家族関係に私は愕然としたし、日本人の核家族化の弊害がここまで進んでいるかと悲しい気持になった。
 100歳以上の高齢者は全国で約4万人いるという。家族や近隣住民から孤立し、周囲に話し相手がいない独居高齢者が多い。内閣府の調査では、60歳以上の一人暮らしで、会話するのが「2~3日に1回」以下の人は男性41%、女性32%。会話の乏しい高齢者は140万人にのぼるという。
日本は諸外国と比べて、高齢者が子供と会話する機会が少ない。内閣府の国際比較調査では、60歳以上の高齢者で週に1回以上、別居している子供と会ったり、電話をしたりするのは47%にとどまる。米国は8割に達し、フランス、韓国とも6割を超える。「年に数回」だけとの回答は米国や韓国が5%前後なのに対し、日本は16%に及ぶ。また同居しながらコミュニケーションがない親子もいる。

 私どもが一番頼りにするのは家族であり、家族の強い絆こそが日本のよき伝統であったと思うのだが、このように高齢者の支えを家族に頼るのが難しくなってしまったことを心から憂える。私たち個人は家族関係が崩壊するような事態にならないよう日頃から心掛け、努力する必要があると痛切に感じる。
 「おひとりさま」で自立して生きられることは大切だが、それが元より人生の目標ではないはずだ。他者に依存し依存されることもあるような、人間的な絆や相互扶助の関係こそが本来あるべき姿である。
 高齢者自身が、意識的に外出し、仕事や世間に役立つことに参画し、また教養講座や趣味の仲間、地域社会などの催しや活動に積極的に参加し、仲間から気にかけてもらえるような関係作りを働きかける生き方こそが求められていると思う。
 高齢者のそうした意識が孤立の解消や豊かなエイジングを楽しむことにつながることを、私どもはしっかり認識して、ライフプランを立てて80年余の長い人生を生きていきたいと考える。
 高齢者の多くは、健康で、勤労意欲もある。労働力が今後減少していくことを考えると、年齢とは関係なく個々人の事情に応じて、多様な働き方をしてゆきたいものである。
 日本にとって高齢者は貴重な資源である。高齢者は誇りを持って、その知恵と元気をもっと活用してゆきたい。人生における生きること、働くことの意義を十分認識し、変化の激しい今日の社会に対応し、前向きに生きていくことが必要であり、若い方々を含めてエイジング・アドバイザーの講座を受講し、参考にされるようお勧めいたしたい。


荒 隆文

荒 隆文 (あら たかふみ) 満70歳
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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