ファイナンシャルプランにどう向き合うか

2010-08-16 18:05:58

 ファイナンシャルプランこそ長期間の準備が必要だと思うし、この講座を通じてじっくり学んでいく必要がある。
 ファイナンシャルプランの主要な構成要素について整理してみよう。
第一に年金問題である。年金をいくら積み上げ、60歳乃至65歳からスタートして概算いくらもらえるかの試算が重要だ。仮に不足することになれば、他の年金商品や、預貯金の確保にも広げていくことが要請されよう。
 第二に退職金を何とか貯蓄に回せるよう生活設計することが必要だ。そのためには住宅ローン等を早期に完済することの工夫が求められる。ある職場では職員が50歳乃至55歳ごろに10年乃至5年後の定年時である60歳時までに借金は基本的にゼロにし、退職金を満額貯蓄に回せるよう計画せよというアドバイスがあるそうだ。例えば住宅ローンでは「30歳前後での住宅資金借入、期間30年、借入額3000万円程度」というのがそのモデルとしてよく使われる。60歳までに完済することが一つの生活設計目標になる。
 第三に生活費の考え方も重要だ。歌にもあるように人生いろいろで最低の生活費だけを見込むのか、ゆとりある生活費を設計するかの違いも大きい。できれば人生のほぼ四分の一に達する期間をゆとりある生活で楽しみたいものだ。

 以上の構成要素に関連して具体的に数字を試算してみよう。2005年の生命保険センターの質問・調査によると、老後の二人暮らし世帯の毎月の最低日常生活費は平均24.2万円であった。またゆとりある生活費(日常生活費に旅行費、外食、孫への小遣い、ゴルフ費用、自動車の維持管理費用などを含む)は平均月37.9万円であった。この差は13.7万円である。従ってゆとりある生活を夫婦2人で過す期間を25年(60歳から85歳まで)とし、物価上昇率をカウントしないとすると、37.9万円×12ケ月×25年=1億1370万円である。
 一方収入面をみてみよう。上記の通り退職金は貯蓄することを前提とする。退職金額については厚生労働省調査の勤続35年平均2000万円(高卒管理・事務・技術職)とみて全額貯蓄するとする。年金は月平均23.2万円(標準的モデル報酬比例部分月10万円+老齢基礎年金二人分13.2万円)として計算すると25年間に合計6960万円になる。従って収入の合計は退職金2000万円+年金6960万円=8960万円である。
 これらの結果、25年間の収入―支出=8960万円―1億1370万円=▲2410万円となり、老後資金は2410万円足りないということになる。貯蓄2000万円を取り崩してもこれだけ不足することになるので、生涯現役として収入を得ることを真剣に考えたほうがよい。
 もちろん住宅ローンの金額・返済時期や年金の支給額、生活費の考え方、本人の財産状態などの様々な要因が絡むので一概には言えないが、長寿時代に入ってファイナンシャルプランの慎重な検討が一層必要になり、本講座で学ぶ部分は多いものと判断される。


玉木 勝

玉木 勝 (たまき まさる) 満67歳
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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